テレビから煙草が消えた日
今日テレビをつけたら、2時間サスペンスを放送していた。
主人公の刑事はチョイ悪の渋いオヤジ。
煙草を吸っていた。
しばらく見ていて何か違和感を感じたが、すぐにその原因がわかった。
主人公が全然煙草を吸っていないのだ。
いや、煙草は吸っている、吸っているが、吸ってない。
同僚の刑事と話しながら煙草に火をつける。
しかし、そのあと煙草を手に持ったまま、まったく煙草を吸わないのだ。
同僚と話しをする間、手元には煙草がある。
顔の近くに手をやり「煙草を持って考え込んでいる風」であったり、それは違うと煙草を持った手でビシリと相手を指さしたりと、煙草はニヒルな中年男性を演出する小道具として立派に役立っていたが、実際に煙草を吸っている姿はほとんど見られなかった。
それに気づいて、思わず笑ってしまった。最高にバカバカしい。
いま、テレビでは煙草を吸うシーンがほとんどない。
煙草を吸う人のドキュメンタリー映像か、石原裕次郎など往年の大俳優を紹介する際に古い映像が流れる程度だ。
刑事コロンボなど昔のテレビドラマを今見ると、道路はもちろん、人の家に入ってもそのまま煙草をバカバカ吸っていて驚く事がある。
建物内で平気で煙草のポイ捨てをするシーンも今見るとショッキングだが、日常風景として当たり前に描かれている。
煙草を吸う姿が未成年に与える影響、などの理由でテレビで喫煙シーンが放送されなくなったのは想像に容易い。
今であれば視聴者からの厳しいクレームがあるだろう。
テレビ側には、そう言った反感を買ってまで煙草を登場させる理由は無い。
これから、もっともっと煙草を吸うシーンは少なくなるだろう。
子供が昔の映像を見て「あれって何してるの?」と親に問うようになるのも、遠い未来ではない気がする。
その頃には「渋い中年男性の演出に煙草」と言う概念自体が無くなっているだろうし、今回感じた違和感を感じることもできなくなるのだろう。
今みたいな中途半端な事をしているくらいなら、いっそその方が清々しいのかもしれない。