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90点の寿司を食べた人間の、その後の人生は幸せか

美味しいものを食べるのが好きなので色々と食べ歩いたり作って食べたりしている。

人間は毎日365日何かしらを食べる訳で、1日3食に間食を加えたら膨大な種類の料理を食べることになる。
単純計算で1年で1000食以上は食べている。

毎日料理を食べているとたまに「おおっ」と思うほど美味しいものに出会うことがある。
食べるのが好きな人間にとってこれほど嬉しいことはない。

それが、歳をとる事にどんどん減っている。
30代になった今は、数カ月に1回あるかないか、という所だろう。

悲しいかなそれは当り前のことで、美味しいものを食べれば食べるほど、随時1位は更新されていく。
最初は70点、その次が80点、90点の寿司を食べてしまったら次に「おおっ」となる為には90点以上の寿司を食べるしかない。

90点の寿司を食べた人間のその後の人生が幸せか、と言うことを最近よく考える。

寿司も、焼肉も、牛丼ですら、一度90点のものを食べてしまったら、90点以下のものには何かしらの不満が残る。
世の中のほとんどの料理の点数は90点より低いだろう。
一度90点を食べたがゆえに、その後ずっと「それ以下」の料理を食べ続ける人生がまっている。それは不幸とは言えないだろうか。

もちろん味覚の好みはあるので「60点だけどこの味めっちゃ好き」みたいなことはたくさんあるし、カップヌードルシーフードは高得点がひしめくラーメンランキングとは別のところでお気に入りリストに名を連ねている。
毎日90点以上の料理を食べようとも思っていない。70点でも充分満足だ。

それでも常に「90点以上たべたいなあ」と言う欲求不満を胸に、毎日を過ごしている。

前に、私よりはるかに色々なものを食べている美食家の人と話をした時に、この疑問をぶつけてみたことがある。
「歳を取ると美味しいものがどんどん減るんですけど、どうしたらいいですか?」
と聞くと、その人はちょっと驚いた顔をしてこう言った。
「世の中には、まだまだ自分の知らない美味しいものがいっぱいあると思いますよ」

その人は自分の好きなジャンルはかなり極めているタイプだったが、私のような悩みはまったくもっていないと言う。
まだ手をつけていないジャンルが山ほどある。たぶん死ぬまでに食べきれない。自分が食べたものなんて、ほんの一握りだと思いますよ、と。

なるほどと思った。
たかがメシの話で大げさだと思われるだろうが、その人は私よりもはるかに大きな目で物事を見ていたのだ。
ポジティブとネガティブの考え方の違いかもしれないが、その考えは私にとって新鮮だった。
焼肉を極めたら蕎麦に行けばいいじゃない。カレーだって、タイ料理だって、私は全然詳しくない。

しかし、そこでスッキリ明るい気持ちになれるほど私は素直でもなかった。
まだまだ欲求不満は終わらない。七つの大罪、暴食の罪は続くよどこまでも。

今日の夕飯は、カップラーメンシーフードをすすりながら小さな幸せをかみしめよう。