ファストファッションの台頭が、ファッションへの情熱を奪った話
ここ10年ほどで服の値段は大きく下落した。
ユニクロ、GU、h&mの登場で、シャツやセーターは1900円で買うのが当たり前になった。
1月に駅ビルを歩いていると、アースミュージック&エコロジーという服屋がセールをしていた。
プチプラ(プチプライス)の代表格とも言えるレディースブランドで、ユニクロよりも今の流行りを追った感じの服屋だ。
価格帯はシャツやセーターで4000円とかそのくらい。
もともと今年のトレンド(しかも海外でなく完全に日本に絞ったトレンド)をふんだんに取り入れていることを考えれば十分安いが、最近の服屋におけるセールの値引きっぷりはすさまじいものがある。
今日足を踏み入れたアースでは、冬のセールで店内全品70%オフ、タイムセールでそこからさらに20%オフだった。
ちょうどいいので、欲しかったブーツを見てみると、6500円が1500円になっていた。いくらなんでも安すぎる。
ちょうどいま欲しい感じのブーツが、1500円。
有名ラーメン店の全部のせよりちょっと高いくらいの値段で、今はやりのブーツが買える。
もちろん一流の靴メーカーの靴とは作りも違うし素材も違う。
安物と言えば安物だが、困ったことに恥ずかしいほど酷い出来でもない。
昔、ファッションとは憧れのアイテムを手に入れる行為だった。
シャツもニットも15000円はしたが、そのシャツを着る自分を想像してニヤついては何度も店に行き、迷ってはやめ、雑誌を眺め、バイト代で一つ一つの服を思い切って買っていた。
いま、服に対してそう言う類の憧れとか、羨望の気持ちはあまりない。
もちろん憧れるようなブランドはあるが、何か一つに憧れるにはあまりにも周りに安くて見栄えのする服が多すぎる。
ファストファッションでたくさんの服をとっかえひっかえ買えるようになったことはいいことだ。
服が安くなったことで、一見ファッションに対する興味や情熱がますます高まりそうなところだが、現実は反対だった。
いつでも欲しい服が買えることで、ファッションに対する興味を急激に失った自分がいる。
いつでも買えるは、いつでもいい。
いつでもいいものは、なくてもいい。
そう考えるようになった。
あえてまた高い服を買おう、とは思わない。
ただ、昔を思い出して、昔の狂おしいようなファッションへの情熱がちょっと羨ましかったりする。